KS-20
-Challenge to evolution-

Powertrain / Drive
扱いやすい出力特性

KS-20では新コースに合わせて最終減速比や出力特性を最適化、新規LSDの導入などを行い、コーナー脱出から次のブレーキングポイントまでの直線区間で確実なタイムアップを計りました。また、燃料タンクの設計を1から見直し、冷却目標も再度検討しました。
・LSDの選定
昨年のマシンKS-19はコーナーの立ち上がりで非常にピーキーな挙動を示していました。その対策のためにアクティブLSD対応可能の学生フォーミュラ専用LSDをIKEYAFORMULA社と共同開発してKS-20に搭載しました。
これにより安定したトラクション、低速コーナーの割合が増えた新コースに向けての旋回能力の更なる向上、そして多様な路面環境に対応できるセッティング性の向上を目指しました。

・コースにあった出力特性
ファイナルギアレシオの決定およびコース分析により、KS-20の常用回転域は7000rpm~11000rpmと予測しました。この領域内にパワーバンドが存在し、かつコースの直線区間でタイムを短縮できる効率よくパワーが出るエンジン特性を目標としました。
・最大限の冷却性能

KS-19ではラジエーターコアを厚くして、冷却性能を向上を試みたにもかかわらず、昨年度の大会のエンデュランス走行後半で水温が119℃まで上昇していました。KS-20では最終減速比を変更する影響で常用回転域が上昇、発熱量が8%増加することも鑑み、KS-19より冷却性能20%向上させて、ラジエータ入口の水温を最大100度以下に抑えることを目標としました。ラジエータの放熱能力の向上、ラジエータを通過する走行風の質量流量の増加からアプローチを行いました。
・安定的な燃料供給
KS-19では、エンデュランスの後半で燃料のエア噛みを起こしていました。KS-20では、新コースに合わせたタンク容量, コレクタタンクの形状、レギュレータからタンクに戻ってくる燃料の出口の位置,バッフルプレートの形状の再検討を行い、エンデュランス走行で確実に空吸いしないことを目標に設計を行いました。
Frame/Body
突き詰められた軽量化

Frameは、全体重量の約15%を占め、マシン全域にまたがるパーツであるため、重量と剛性が車両に与える影響は大きいです。
そのため、マシンコンセプトを達成するために軽量化とサスペンションのロール剛性配分に影響を及ぼさないねじり剛性の確保をフレームのコンセプトとしました。
・レイアウトの見直し
マシンの各部品の取り付け位置を見直すことで、パイプ本数と一本当たりの長さの削減し、KS-19からKS-20にかけて5.0kgの軽量化に成功しました。また、軽量化に伴う剛性の低下とドライバー空間の縮小もサスペンションジオメトリを見直し、コクピットのコンパクト化を行うことで対策しました。

・リアバルクヘッド (RBH)構造の採用

リアセクションには、駆動力とサスペンションから大きな入力があります。KS-20では、ここに更なる軽量化を施しながら、強度・剛性
を確保するためにリアバルクヘッド(RBH)構造を採用しました。
・高剛性
コクピットサポートブレースの設置、広い開口部とサスペンション入力部にトラス構造を形成するパイプを追加し、より高いねじり剛性を確保しました。
Aero
Wind for Speed

今年のマシンではダウンフォース向上による限界性能向上を主眼に置きつつ、導風によるパワートレイン系の性能向上、シーンに応じたセッティングを可能にする設計を行いました。
・フロントウイング
翼型の形状をグラウンドエフェクトを活用できる形に変更しました。これにより、ドラッグ効果を抑えつつダウンフォースを稼ぐことができました。また、剥離の改善のためにマルチエレメントウィング同士の間隔を狭め、翼上面への流れの供給による翼下面剥離の抑制を達成しました。

・リアウイング

ダウンフォース向上を目標としてフラップの全幅を増加させ、圧力発生点の増大を導きました。ウイング下面のロッドを撤廃し、下面流れを阻害するものがなくなり、流速が向上しました。さらに、各フラップの迎角を5度増大(前年比)させ、上面と下面の圧力差増大を計りました。
・冷却の最適化

昨年のマシンの問題点として、ラジエターコア厚増加にもかかわらず
通過風量不足により熱問題の発生が挙げられます。これを解消するために、先端を絞るサイドポッドの形を採用してタイヤ後部の乱流を遠ざけ、サスペンションアーム下面を通る流れの速い空気をとりこむようにしました。
Suspension
Tractable -扱いやすさ‐

サスペンション部門ではドライバーが扱いやすいマシンにすることで、速さを維持できるマシンを目指しました。扱いやすくなったことで一周のタイムが低下することが予想されたため、一周のタイムはKS-19より低下させないことも目標としました。
・目標に基づくレイアウト
ホイールベースとトレッド、前後重量配分、重心高の順で「扱いやすさ」をターゲットとしてシミュレーションの結果をもとにレイアウトを決定しました。
・マシンに最高の靴を

軽量化、低重心化のため、ホイール径は10インチに絞り、目標タイムを達成できるタイヤの中で、できる限り操舵力を小さくするためにニューマチックトレイルが一番小さいタイヤを選択しました。また、ホイールは1ピースで信頼性も確保でき、軽量な”BRAID STURACE Aluminium10”に決定しました。
・ジオメトリーの模索
変化しにくい操縦性と高いセッティング性を確保するために、ロガーデータを用いて昨年のマシンで計測した最大ロール角をベースにして各ジオメトリ―を確定させました。
・「耐える」「軽い」足回り
パイプの径と厚みを強度と剛性に対して最適にする、プルロッドとの角度を0°に近づけることで応力を分散させる等の工夫を行い、最大荷重時に安全係数を3以上、かつスキッドパッド走行時にキャンバー変化を0.3°、トー変化を0.1°以内に保ちながら、1988gもの軽量化に成功しました。
・バネ下重量
目標とした「変化しにくい操縦性」の達成のためにはバネ下重量を小さくすることが重要でした。徹底的なハブベアリングの選定、アップライト、ハブの解析で軽量化を達成しました。

・微細な動きまでもコントロール
「変化しにくい操縦性」のため、ロール量が少なくなるようスプリングを硬くする、車高変化を少なくして接地荷重の変化を少なくするために最適な減衰力にする設計を行いました。